市民と同じ目線で語り合う姿勢

それを大事にしています       


山家健一 内科医会前会長、 高井美紀 毎日放送アナウンサー


山家

 内科医が主ですが、内科だけを標榜している医師もあれば、内科・外科とか内科・整形外科とかいった形もありますが、いずれにしても今の時代の内科学について行かなければいけないと感じ、勉強しようという気持ちの人たちの集まりです。大阪府下で約一〇〇〇人が参加しています。もちろん医学的な研修も行いますが、それだけでなく、現在の医療体制に関して、社会における内科医の立場がどうあるべきかという社会的な勉強もします。その他に直接患者さんに触れているわけですから、市民と直接相対して、市民へのアプローチをしようということを重要視しています。



高井 それは最近、かかりつけ医というものをもっと地域との連携を強くしようという動きと関係しているのですか


山家 それがすごく大事なことで、連携すること、さらに白衣を脱いで背広になった医者が市民と触れるということが大事です。私たちは年に一回、市民講座を行っていますが、ここでは単に講演会だけでなく、机を挟んで市民と医師が相対して健康の問題や医療問題の話しをしたりしています。講演会でもフロアから手を上げていただいてお話を聞くようにしています。医者は何を期待されているのか、何でお返しすればよいのか、またどういう点が不満なのか、要するにクレームをしっかり聞こうという姿勢を持っています。


高井 皆さんがどんなことを感じていらっしゃるのか、実感されるでしょうね。


山家 「待ち時間が長い」 これだけでは患者さんは怒りません


 これは近ごろ、痛切に感じていることです。医療の内容が整っていれば、患者さんはあまり不満と思わないということがわかりました。聴診器を当てる、注射をする、薬をもらう、それだけだったら待ち時間が長かったら怒るわけですよ。そこの所で医者が患者さんの話を親身になって聞いて、親身になって答えて、色々な指導、説明が十分に行き届いたら患者さんは怒らないのです。


高井 待つだけのものに値するものがもらえたら患者さんは納得されるということですね。

山家 もう一点は、市民の皆様の医学に対する知識が進んできたので、聴診器一本の診断の時代はもう過ぎたということです。例えば、画像診断とか、それもきちんと画像の説明ができなければいけないわけです。またこの頃、すぐ診断結果が出るキットがあるのですが、子供さんのこわい病気の一つとしてRSウイルスというのがあります。つい最近もこの疑いがあるお子さんが来ました。診断キットを使って診断を行い、それをもとに、きちんと説明をすれば入院してその後の治療に関しても納得してもらえるわけです。この頃は、そういった時代に入ったと考えるのです。


高井 いわゆるインフォームドコンセントということですか?


山家 インフォームドコンセントという一言で片付けてしまえばそうなんでしょうが、私は医者の姿勢と医者のお話の仕方、それがこれからの医療の姿だろうと思っています。



病気の特定は大変 

   “しゃべり”それも医療の技術……山家


 アンケートをして医者への注文を書いていただきますが、納得のいく説明をして欲しいが一番。次は適確に診断をして欲しいです。これは医者にとっては耳の痛いことです。近ごろは病気のバリエーションが多くなってきて特定することが大変です。よりたくさん持ち駒を持っていて、その中からこれでは?と思って選んでいくわけですが、これがなかなか難しいことです。


高井 患者さんはすぐ答えを求めますが、お医者さんはたくさんある可能性の中から消去法で何であるか、一つに絞りこんでいかなければいけないわけですね。


山家 また医者は医学部でとても難しい言葉をいっぱい習ってきました。それがついうっかり出てしまうことがあります。それをもう少し分かりやすく説明するというのも一つの技術なのですよね。しゃべりの技術が大事なのですが、それまでそういった教育は受けたことがない。専門用語を自分の頭の中で噛みくだいて、人それぞれに合った言い方を工夫するのも技術、患者さんが分かったという顔をするまでしつこく迫るというのも技術といえます。


お薬だけください

   これは危険です  ……山家


 私たちも気をつけなければいけないのですが、患者さんにもお願いしたいことます。それは「お薬だけください」ということです。何ヶ月も薬だけを投与していて、取り返しのつかない病気に気がつかなかったということがありました。診察を拒まれたら強制することもできませんが、深く反省させられた事例です。

 法律で、前は多くの薬は二週間までしか出せなかったのですが、今は無制限です。これが非常に危険で、例えば糖尿病の場合、多くは薬を飲んでいれば血糖値は安定しているわけですが、血糖値には自覚症状がありません。ふっと気がついたら二倍、三倍になっていたということもあるわけです。見直そうという動きもありますが、その前に、患者さんに危険であるということを理解してもらうことが大事です。


高井 診察を頻繁にといっても、勤めている若い人たちはなかなか大変ですよね。せめて健康診断は受けた方が良いですか?


神様は「痛い」という言葉を

    私たちに与えてくださいました ……山家


 健康診断というのは車で言えば車検です。車検から帰ってきて翌日にエンジンがかからなくなる車もあるでしょ。健康診断を否定はしませんが、稀な病気、健康診断の網の目をくぐる病気がたくさんありま。一対一の診断での「痛い」いう言葉はとても大事なインフォメーションです。この「痛い」がどんな種類なのか、医師は診断に結びつけることができます。


高井 内科医会は開業の先生が中心とうかがいましたが、病院と診療所、役割分担がありますよね。先生方の行き来というか、患者さんとのパイプ役になるということが大事なのではないかと思いますが?


山家 開業医がどれだけ多くの後ろ盾の病院をもっているか、今の時代はそれが大事になってきた時代と思います。風邪ひきの患者さんが大学病院に行くのはちょっと筋が違うと思います。風邪はひとまず近くのお医者さんに行き、そのお医者さんがこれは?と思ったときにはそこから紹介してもらうというのが一番効率の良いことではないかと思います。


高井 診療所の先生によって交通整理というか、道筋を決めてもらった方が、患者さんにとっても時間もコストも負担が少なくなりますよね。


 
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