第2回推薦医部会51名が新たな推薦医として誕生

 3月15日(土)ホテルニューオータニで第2回推薦医部会が開催された。最初に山家会長から開催にあたっての挨拶( 面に別途掲載)、続いて光井副会長(推薦医制度運営委員会委員長)より平成20年度新規合格者の公表、代表として会長より加納治男先生(西成区)に合格証の授与が行われた。講演ははじめに泉岡利雄理事より症例発表、続いて関西医科大学の岩坂壽二主任教授による「危ない胸痛のみかた」のテーマで行われた。

 3月15日に開催された第2回推薦医部会で51名の会員が平成20年度新規合格者として公表され、合格証が交付された。推薦医部会開催にあたっての山家会長の挨拶を掲載すると同時に、今回の演者であった岩坂壽二関西医大主任教授から推薦医に関して高い評価があり、ご自身も推薦医を取得したいとのご希望があり、推薦医の一員 になられたことをご報告する。これは第1回推薦医部会の演者である清野裕関西電力病院病院長に続くものである。

 大阪府内科医会推薦医とは、法人である大阪府内科医会が、市民の皆様に「この先生は信頼して診ていただけますよ」という意味で推薦しているものです。よく似た名前のものとして「認定医」がありますが、試験を受けるなどして単位を取得したら個人が認定されるというものであり、推薦医とはニュアンスが非常に違っています。会として人格も含めて推薦しているということで、大きな意味合いを持っています。

 日本内科学会をはじめ多くの学会、そして日本臨床内科医会にも認定医制度、専門医制度がありますが、この制度が諸般の事情により複雑な動きを見せています。それらの動きを見るにつけ、原動力として、会そのもののアクティビティが非常に大切であると痛感させられるものであります。

 昨年の第1回推薦医部会の時は五里霧中で先行きに不安もありましたが、今回、新たに51名の先生方が推薦医に合格され、合わせて245名となり、大阪府内科医会の会員の28%が該当することとなりました。この数字を非常に励みになり嬉しく思っています。

 推薦医部会講演会では、内科の、それもそのレパートリーでもっともご高名な先生に講演をしていただくこととしており、今後もこのスタンスをずっと続けていこうと思っております。と同時に、先生方皆様でこの会をさらに育てていただきたいと願っております。

講演

「危ない胸痛のみかた」

 関西医科大学第二内科

循環器腎内分泌代謝内科 

 主任教授 岩坂 壽二 先生

危ない胸痛の見方をテーマに色々なデータを示されながら、広範囲に、臨床医にも分かりやすく、話された。胸部症状を訴える疾患には狭心症や心筋梗塞以外に急性大動脈解離や塞栓症など、さまざまな疾患がある。関西医科大学病院では2001年より胸痛センターを立ち上げ、胸痛を訴える救急疾患の患者を受け入れるようになった。そのため、救急搬送される患者は急増し、同時に疾患も多種多彩になった。

最初に心電図のポイントについて話された。心電図はP波・QRS波・T波で構成されている。PR時間は0.20秒以上で異常である。つまり5mm以上が異常ということになる。QRSの幅は正確には0.1秒以上は異常であるが、わかりにくいので心電図上2mm以上はおかしいと考えるとよい。幅の広いQRSのことをwide QRSと言うが、wide QRSは右脚ブロック以外ほとんど異常だと考える。QTは心拍数によって時間が変わるので、異常かどうかを調べるにはRR時間で補正したQTcを出すが非常に面倒である。そこで岩坂教授は簡単な見方として、心電図上のRRの中間点を示し、中間点よりT波の終わりが延長していればQTは延長していると考えればよいと示した。心電図上QからT波の終わりまでを収縮期というが、その中でもT波の頂点付近を受攻期という。QTが延長している場合、その受攻期が56倍延長するといわれている。この受攻期に心室性期外収縮を起こすとR on Tを起こし心室細動になる。つまりQTが延長しているということは非常に危険な状態である。二次性にQTが延長する病気を列挙した。虚血性心疾患はもちろんであるが、その他に薬でも延長する。特にキニジンやプロカインアミドなどの抗不整脈薬といわれる薬で延長する。またエリスロマイシンなどの抗生剤や三環系抗うつ剤でも延長する。従って、こういった薬を使う際には充分に注意が必要である。

次に期外収縮について話した。よく患者はドキーンとする、怖いと言って来院する。期外収縮は本来の心拍より早くに収縮する。つまり拡張期にほとんど血液が溜まっていない状態で収縮する。その後休止状態があり、次の心拍はほとんど二回分の血液を心臓に貯めた後に収縮する。患者が症状は訴えるのは、この「その後の心拍」の自覚である。従って症状が強い患者にはその点を説明して安心させることが大切である。

心電図で重要なことに心拍数がある。単純に頻脈であることは悪いという考えではなく、なぜこのような心拍数であるかを、病態を含めて考える必要がある。また、心電図の注意として第I誘導のP波がある。第I誘導のP波が陰性であれば胸部誘導を見て、胸部誘導のV5-6の電位が低ければ右胸心を考えなければいけないが、胸部誘導が正常にもかかわらずにP波が陰性であれば電極の左右の付け間違いが考えられる。心電図を見る時は、第一誘導のP波が陰性でないかをまず確認することが重要である。

続いて心房細動の話があった。心房細動では、RR間隔が不規則であるかに注意し、あまりf波を確認することに神経を注がないことである。特に心拍数が早い場合は明らかなf波を見つけにくいことがよくある。Mayo Clinicに留学していたスタッフのデータを示し、アメリカでは過去20年間で心房細動の患者は12.6%増加しており、その原因には肥満が非常に重要な因子を示すことがわかるとした。また心房細動は認知にも影響を与える。同年齢では、心房細動がない人に比べてある人のほうが男女ともに認知の頻度が多くなる。つまり、心房細動は徐々に増加しているが、まずはならないようにしていく一次予防が重要である。ACE阻害剤やARBは、心房細動の新規発症抑制作用があるといわれている。ブロプレスも心房細動の抑制効果があり、犬の実験では心房の繊維化の抑制効果も認められている。

次に急性冠症候群(ACS)の話があった。高齢者の場合、胸痛を訴えられない急性心筋梗塞の患者が多いということに注意する必要がある。6575歳では29%、7685歳では50%、86歳以上では75%が胸痛を訴えられない。従って患者の状態をよく観察して、少しでもおかしければ心電図をとることが重要である。注意すべき症状には嘔気・嘔吐・冷汗がある。特に冷汗は重要な症状の一つである。急性心筋梗塞は入院すれば95%以上の方が良くなる。ただし、急性心筋梗塞であるにもかかわらず、413%が帰宅しても良いと誤診され、そのうち1125%が死亡するといわれている。まず疑って心電図を撮ることが大切である。ここで教授は冠動脈が閉塞してからの変化を示した。冠閉塞が起こると拡張不全→収縮不全→左室充満圧上昇が起こり、肺水腫→心電図変化→胸痛などの症状となる。このように症状はいちばん最後に位置するわけである。心筋壊死が始まっているかを判断する材料として、心筋トロポニンTを測定できるキッドがある。このようなものを使用するのも良いと思われる。

最近言われている疾患であるタコつぼ型心筋症にも言及した。心尖部を中心とする広範囲な心室壁の可逆的な収縮低下を示し、心基部が対照的に過収縮を起こすことを特徴とする病態と定義されている。原因ははっきりしていないが、高齢女性でそれほどリスクファクターのない人に多いということが特徴で、精神的・肉体的苦痛を伴っている人に多い。心電図変化は、心筋梗塞と同じようなST上昇を認めるため急性期はCCUで管理することが必要であるが、予後は比較的良好な疾患である。

この他、最近、増加している大動脈解離や肺塞栓症が胸痛を認める疾患として鑑別が必要であるが、いずれにしても患者の状態をよく観察し、疑いがあれば心電図をとることが重要であると岩坂教授は講演を結ばれた。


                  (泉岡 利雄)