パネルディスカッション 頭痛の各論を学ぶ

座 長  
 会長 山家 健一  
 理事 高橋 徳  
パネリスト
 温知会間中病院院長 
       間中 信也
 神奈川歯科大学附属
 横浜クリニック教授 
       五十嵐久佳 
理事    西谷 昌也

一般臨床医が頭痛患者に対した時、精密検査が必要、または専門医に回した方が良いといった見極めは?

西谷 脳神経外科という看板を掲げている私の診療所でも、やはり風邪や肩こりで頭が痛いといった患者が多い。特に風邪が流行っているような時期は、その流れの中で見逃してしまう危険性は多くなる。そういった症状から専門医に渡すべき頭痛を判断する力が開業医には求められる。
 子供の風邪の場合は、その中に髄膜炎、肺炎、中耳炎、蓄膿症といったものがたまに混ざっている。子供の場合は、耳は絶対に診る、少しでもおかしいと思ったときは「頭蓋単純」を1枚撮影する。大人の場合は、いつもと違う症状の時には注意が必要である。患者が風邪をひいたと言っても、いつもの症状と違うのではと感じることが、かかりつけ医の診断術の一つともいえる。
五十嵐 風邪で頭が痛いという人は非常に多いが、片頭痛持ちでなければ頭が重いという程度である。ガンガン痛いというのは片頭痛持ちであると考えられるが、自分で気がついていない人も多い。風邪によって潜在的な片頭痛が誘発されて表れる。また副鼻腔炎では片頭痛の症状が悪化する。
 風邪をひいていない状態の時、副鼻腔炎の炎症が治まっている時に、頭が痛いことがないかを聞き取ることで片頭痛患者か否かが判明する。この聞き取りをしっかり行うと、一般医での片頭痛患者の割合は増加すると思われる。

いつ、専門医に相談すべきか 特に夜間の来院の時、一晩待って良いか、どこまで待てるかというコツを
間中 いつもの頭痛という返答が来たら、あえて画像を撮る必要もないと思うが、普段の頭痛と違うというキーワードが入ってしまったら必要ないと思っても画像を撮るほうが良い。頭痛の急患できた場合はCTは絶対必要である。頭痛の中で一番恐いのは、くも膜下出血である。CTで問題がなかったら髄膜炎であっても、解離性動脈瘤であっても1晩ぐらいの余裕はあると考える。重病感がある患者は、それ相応の設備のある病院に送ることが大事であり、その重病感を鑑みるのが大事なことである。また神経系の主訴、めまいやしびれで来た場合はCTは必須と思う。自分のところに無い場合は、明日にもそういったところに行くようにと一言添えることでトラブルは防げる。

痛一般として画像診断の重要性は強調されているが、脳波の検査が頭痛診断に果たす役割は
五十嵐 子供の場合は脳波の異常が出ることはあるが、大人ではほとんど関係ない。
間中 国際学会で日本の医師が脳波をとる必要性の有無を質問したら、海外の医師に、頭痛で脳波をとる必要がなぜあるのかと言われてしまったということがあるが、後頭部のスパイクがある人はてんかんの症状として頭痛が出るということは知られているので、あながち意味が無いとも言えないが、大人の場合はほとんど必要ないと言える。

薬の上手な使い方について  「トリプタン製剤」に関して
五十嵐 頭痛を主訴として来院したら、日常生活に支障が生じていると判断できる。従って片頭痛と診断がついたら、そして患者さんが市販薬は効かないと言っていたら、最初からトリプタンを使う。伝家の宝刀のように「1錠出しておきましょう」ではなく、最低3錠出して、痛くなったら早めに飲むようにと指導することがコツである。
間中 頭痛でわざわざ来院する人のほとんどが片頭痛であるということが最近分かってきた。痛み止めが効いているからそれで良いという患者がいるが、トリプタンは切れ味が違う。トリプタンは高価だからという理由で出さない医師がいるが、薬を使うかどうかは患者が決めることであり医師が決めることではない。患者にトリプタンを使うチャンスを与えるべきである。

トリプタン乱用にならないために投薬上の注意点
間中 始めにはっきりと回数を明言する。月10回、これで大抵の患者は治まるはずである。
薬の副作用について トリプタン系の使用で、締め付け感や後頭部の凝りを感じることがあるか
五十嵐 トリプタンの共通副作用として、喉や胸、腕の締め付け感を訴えることはあるが一過性のもので心配はない。しかし狭心症、心筋梗塞の既往者は禁忌になっている。SSIIを使用していると、いずれもセロトニンに関係しているのでトリプタンの作用が増強され、副作用が増強される可能性はある。

トリプタン製剤4剤の使い分け
五十嵐 効きは少し悪くても副作用が少ないもの、副作用が少しあってもキッチリと効くもの、効果の発現が早いものと患者の好みは色々である。好みを聞いてまず何を出すかを選び、次回、それで満足がいっているかを聞き調整していく。
中学生で小学生の頃から頭が痛いと場合の薬物療法は
五十嵐 子供の片頭痛で急性期の場合、一番推奨度の高いのはアセトアミノフェンである。安全性も高い。アセトアミノフェンで効果が現れないという場合は、日本ではトリプタンの子供への使用のデータはないが、中学生ぐらいになれば身体も大人に近づいているのでトリプタンの使用は勧められる。原則、大人に使って良い薬は子供にも良く、ただ、体重で換算すれば良いのであり、例えばイミグランを半量使用する。海外ではイミグランの点鼻薬は子供に有効であるという報告が多くされている。また発作が頻回に起こる場合、抗てんかん薬デパケンを予防薬として少量使うのも子供には効果がある。欧米では慢性頭痛には抗てんかん薬が比較的多く使われている。不登校で毎日のように頭が痛いという子供は心療内科への受診を勧める。

一般の頭痛に対する鎮痛剤の扱いについて 薬物乱用頭痛の危険性も踏まえて
五十嵐 緊張型頭痛でも、パソコンに長時間向かった、ドライブをしたといった理由があって起こる緊張型頭痛の場合は、鎮痛薬の使用は問題ない。しかし頻回に緊張型頭痛が起こる患者の場合、鎮痛薬の服用は気休めであり実際はあまり効いていない。何日も鎮痛剤を飲むことで薬物乱用頭痛の危険性が伴う。薬物乱用頭痛併発の一番の理由は、片頭痛がもとにあり、そこに緊張型頭痛が加わり、鎮痛剤を早めに飲まないと効果がないことを経験として知っているため、どんな頭痛でも鎮痛剤を早めに飲んでしまうことからである。治療法は、薬物乱用頭痛の可能性があることを最初に話す、市販薬を飲むことをやめてもらう、1週間はとてもつらいと言うことを話す、しかしそれを乗り越えたら楽になると患者を励ます、そして薬物乱用頭痛に一番効果があるといわれているトリプタノールを処方する。どうしても辛い時のためにトリプタンを1週間に2回までなら飲んでも良いとして辛い時期を乗り越えてもらう。この場合は頻回に診察する必要がある。

頭痛の予防薬、塩酸ロメリジンついて いつまで続けるのか
五十嵐 エビデンスはないが、一生続けなければいけない薬ではない。しかし一気にやめるのではなく、まず投与量を減らし、それでも大丈夫ならば休薬する。頭痛が頻回起こるようになったら再投与する。

予防薬、塩酸ロメリジンが効果がなかった場合、どうするか
五十嵐 緊張型頭痛を併発している場合、トリプタノールを使う。1錠10oから始めて、それでも効かないときは1日3錠まで使う。高血圧気味の人は喘息発作がないことを確かめた上でインデラルを使うこともある。それでも効果がないときはデパケンを使う。

月経時の偏頭痛の予防薬について
五十嵐 月経が規則的な女性の場合は、月経の1週間前ぐらいから塩酸ロメリジンを服用して終わったらやめるという方法もある。トリプタンが月経時には効きにくいということが多いので、その場合はユンセルと同時服用する。

 最後に、一般開業医は頭痛にどのように向き合ったらよいかという質問に、間中先生は、日本では偏頭痛は840万人といわれているが受診していない人が圧倒的に多い。頭痛で日常生活が侵されている多くの人に受診してもらいたいが、頭痛専門医のパワーも限られている。一般医のにも頭痛を積極的に診ていただきたい。頭痛に興味を持っていただくことで、患者も相談するようになると結んだ。