経口血糖降下薬治療のスターティング&スタンダードを考える

東京医科大学内科学第三講座
小田原雅人

 糖尿病人口は800万人を超えておりまさに国民病である。糖尿病による重篤な血管合併症は患者自身の不幸であるだけでなく医療費を押し上げる大きな問題でもある。そしてこれをいかに予防できるかは我々臨床内科医の活躍にかかっているといってよい。
 ここ10年ほどの間にαGI、ピオグリタゾン、グリニド薬など様々な作用機序の新薬が登場した。これら新薬の有効性が大いに喧伝される一方で、従来からもっとも処方されているSU薬がやや過少評価されているようである。今回は東京医大の小田原雅人教授をお招きし糖尿病治療薬のなかでも基本薬ともいってよいSU薬を中心にその有用性についてご講演いただいた。
 近年の欧米また日本の大規模臨床試験から、合併症予防にはまず厳格な血糖コントロールが重要であるということが明らかになった。それに対応し日本糖尿病学会ではガイドラインの改定を行い、従来血糖コントロール「可」と称していたHbA1c値6.5−7.0%未満を「不十分」とし、より厳格な血糖コントロールを求めることとした。しかしこれをクリアするのは難しく、実際、糖尿病専門施設でも糖尿病患者の6割近くの患者は達成できていないという。
 血糖管理を十分に行うためには、まずHbA1c値および空腹時血糖値を確実に下げる必要がある。それにはどの薬剤が有用か?
 最近よく使われるαGIはどうか?α-GIやグリニド薬はおもに食後血糖のコントロールに用いる薬剤であり空腹時血糖改善効果は期待できない。にもかかわらず、食後血糖のみならず空腹時血糖が高値を示している症例にもこれら薬剤を単独で使い続けているケースがしばしば見受けられる。
 それではピオグリタゾンか? これはインスリン抵抗性改善薬であり日本人は欧米人ほどインスリン抵抗性が強いケースはまだ少ないので使える症例は限られてくる。 日本人の糖尿病患者は欧米人に比べインスリン分泌能が低く、食後のインスリン分泌の立ち上がりが悪いという特徴があり、膵β細胞のSUレセプタと結合しインスリン分泌促進作用を発揮するSU薬が効果的であると考える。
 現在は主に第二世代のグリクラジド(グリミクロン)とグリベンクラミド(オイグルコン・ダオニール)、第三世代のグリメピリド(アマリール)が使用されているが、もっとも強力なのはグリベンクラミド、そしてグリメピリド、グリクラジドの順である。グリミピリドのインスリン分泌作用は血糖改善効果の割にはマイルドであり、インスリン感受性改善効果を併せ持つことが特徴である。最近の肥満傾向に伴いインスリン分泌低下に加えインスリン感受性が低い糖尿病患者が増加しているが、このような患者にも使いやすい。
 さてよく効くSU薬であるが問題点がないわけではない。まず低血糖がある。しかしSU薬の中ではグリメピリドは血糖降下作用のわりにインスリン濃度増加はマイルドであるということから低血糖を起こしにくいと推察される。体重増加もSU薬の問題点であるが、グリメピリドは他SU薬に比し少ない傾向にある。体重に関してはピオグリタゾンでは頻発するので要注意である。また、膵B細胞が疲弊する2次無効のいう問題がある。しかしこの概念は暖味な概念であり、SU薬による刺激だけでなく、老化、高血糖などの影響もありまだエビデンスがない。すくなくとも分泌刺激なマイルドなグルメピリド1〜2mgは問題ないと思われる。最近クローズアップされていることは虚血性心疾患に対するSU薬の悪影響である。これはSU薬が心筋細胞上のレセプタにも作用するため起こると考えられているが、グリメピリドはそのレセプタへ結合せず影響しないという。
 最後に薬価のことについてふれられた、SU薬 ビグアナイド薬は低薬価である一方αGI、ピオグリタゾン、グリ二ドは高薬価である。降圧薬やスタチンなどと併用が必要な場合などなるべく負担の軽い組み合わせを選びたいがその面でもグリメピリド、今回は触れなかったが肝でのインスリン感受性を高めるメトフォルミンとの併用もよい選択肢であろう。 


                           福田正博