大阪府内科医会法人化記念講演会
「日本の医療の現状と問題点」 

酒井國男大阪府医師会会長

 酒井府医会長の講演は、まず、現在の医療界がなぜこのような厳しい状況になったかという分析から始まり、以下のように述べた。
 すべての元凶は昨年の選挙で小泉首相に大勝を与えたことにある。そのため政府が推し進めている医療制度改革が新自由主義的な経済原理、分かりやすく言えば、市場経済原理によって医療をコントロールするという状況がさらに加速されている。 他方、ここ十数年、全世界的にこの動きがみられるが、この実証はイギリスのサッチャー、アメリカのレーガンも示したものである。各国では国民が不合理さに気がついて、選挙でノーと最後のサインが出したため失脚し、最終的にはすべてが失敗に終わっている。
 小泉首相は「競争のないところに改革はない」と言い、民に委ねられるところは民に委ねるとしているが、医療は効率だけで評価されるべきものではなく、根底にあるのは公平さであると酒井会長は主張した。また最近になって「格差社会」という言葉が流行語のように使われはじめたが、医療も、患者さんの負担がどんどん増し、必ず格差社会になってくるであろうと思われる。小泉首相は「痛みに耐えてくれ」という言葉をよく使うが、公平であるから痛みに耐えられるのであって、明らかに格差社会が見えるような医療では、国民は痛みに耐えられないとも酒井会長は述べた。 
 厚生労働省は、医療費の高騰で医療制度がこのままでは持たないといった宣伝を行っているが、日本では国が負担する医療費は先進国中、最低である。医師一人一人が日ごろ、患者さんに接するにあたり、このことを含めて、色々な情報を与えることが大切と思われる。医師会としても今後、パンフレットや説明に使用できるようなさまざまなツールを用意していくので、患者さんに理解してもらえるよう語りかけて欲しいと訴えた。
 さらに、このまま患者さんの負担増が続くと、生活習慣病などは受診抑制がかかり、死亡率の上昇が起きてくるとし、また癌検診への介入をどうしていくかにも言及した。大阪では癌検診受診率、要精密検査の受診率いずれも低く、ほとんどの癌でその死亡率は全国1・2位を争っている状況であり、明らかに根拠のある肺癌、胃癌、大腸癌、乳癌などの検診を、真剣に取り組んでいただきたいとした。
 最後に、国民の健康と福祉、幸せを守り、国民のことを一番に思うことで国民に理解されていくと信じ、日々研鑽し、診療に頑張っていただきたいと結んだ。