総会記念講演

骨粗鬆症新たな治療戦略を考える

大阪市立大学大学院医学研究科
    代謝内分泌病態内科学
 教授 西澤 良記 先生

 

  社会の高齢化にともない骨粗鬆症は増加しており現在1000万人と推測されている。 また、骨折は寝たきりの原因の第2位でもあり、骨粗鬆症をいかに発見・治療し、骨折を予防していくか臨床内科医にとっても重要な課題である。そこで今回は、骨粗鬆症について最新情報をふまえ西沢良記先生よりご講演をいただいた。

 骨粗鬆症とは、従来骨量減少による骨の脆弱化により骨強度が不足し易骨折性を示す病態であるとされてきたが、最近では骨強度を決定するのは骨量(骨密度)だけでなく骨質(骨微細構造や骨代謝状態など)の変化が重要視されている。
           
 診断基準では、(1)脆弱性骨折があること、(2)また骨折がなくとも骨密度が若年成人平均値(YAM)の70%未満または脊椎X線上骨萎縮度II度以上の場合に骨粗鬆症とする。 この診断基準を満たすものは骨折がなくとも骨折リスクが高く積極的に薬物治療すべきである。また、より軽症な骨減少症の状態でも、ステロイド治療の既往、閉経前骨折の既往などの骨折のリスクを有する場合は早期に薬物治療が推奨される。

 現在、薬物治療は骨吸収抑制薬が中心であり、エストロゲン、ビスフォスネート、選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)が中心となる。 また本邦で特によく使用されているビタミンD3やビタミンKなどは骨形成作用も有することが知られており、上記薬剤と併用されるケースが多い。 エストロゲンによるホルモン補充療法(HRT)は、骨量が増加し骨折のリスクが30%以上低下し有効性が高いが、様々なリスクも潜在している。

 2002年のWHIスタディでは、エストロゲン投与で大腿骨頚部骨折や大腸癌のリスクが低いというベネフィットが得られたが、一方、静脈血栓症、心血管障害や乳がんなどのリスクが有意に高くなり、トータルでリスクが上回るとの判断で試験は早期に終了した。このエストロゲンの弱点を解決したのが、SERMである。この薬剤は性腺系臓器には抗エストロゲン作用があり、骨にはエストロゲン作用を示し、骨量を増加させコレステロールを低下させるという。MOREスタディではSERMのラロキシフェンの有効性が報告され米国ではHRTからのシフトが始まっている。

 SERMは子宮内膜癌、乳癌の発生をプラセボより抑制、また脳卒中に発生率もプラセボより低かったという。静脈血栓症の発症率はHRTと同レベルであり、ただしHRTに認められた更年期障害への効果はなかった。薬物療法の目的は骨量を増やすことで骨折を予防しQOLの向上を目指すことである。従来は大腿部頚部骨折によるQOL低下のみが重要視されてきたが、最近の調査では椎骨骨折も数が多いほどQOLが悪化することがわかってきた。また生命危険度も両者同等であるという。 

 椎骨骨折抑制のエビデンスがあるのは第2世代のビスフォスネート(アレンドロネート・リゼドロネート)、ラロキシフェンである。どの薬剤も漫然と投与するのではなく3年をめどに治療法の再評価を行うべきである。 例えば、閉経後骨粗鬆症では、45〜55歳で3年程度を目安に更年期障害を合併する場合はHRTを施行、55〜75歳でラロキシフェンに変更し椎骨骨折を予防。さらに75歳以上では頚部骨折予防を視野に第2世代のビスフォスネートに切り替えて行くという具合である。 

 最近、ラロキシフェンでは同じ骨量でも骨折のリスクが低く、 腰椎骨密度増加率と骨折抑制率との関係をみると骨量増加がなくとも27%骨折抑制率が改善しているということが明らかになった。これには骨質の変化が関与している可能性が高い。 また、骨の高代謝回転型も独立した脆弱性増強因子であり、高代謝回転と低骨量状態が重なると骨折リスクは4倍となるという。

 このような骨代謝状態を見極めるには骨代謝マーカーを測定することが有用である。 保険適応もあるがまだまだ実地医家の先生はあまり測定されていないようである。 是非、これらマーカーを利用していただきたい。ただし、これらのマーカーは骨粗鬆症の診断ではなく、治療法の決定や治療効果の判定に使用すべきものであり、制約も多いので留意する必要がある。 

 代表的な骨吸収マーカーとしては尿NTX、尿CTX、尿 DPDなどがある。治療前後で1回ずつ算定可能である。尿NTXが54以上では骨折リスクが高く、また前値に比し35%減少すれば治療効果があったと判断できる。このようなマーカーを用いながら効率のよい骨粗鬆症の薬物治療を勧めていただきたい。