思うこと
        大阪府内科医会 理事 政近 博


 日々、診療していて、我々男どもに比べて女性とは実に複雑なものだと思うことがある。
 昨今、空前の韓国ドラマブームで、オバファン(オバサマのファンをこう言うんですと)は、やれリュ、シウォンとか大変である。今の韓流ほどではなかったが、少し前にジェーン・オースティンのドラマシリーズの放映日には、ロンドン中のオフィスの女性スタッフが足早に帰宅したといわれた。日本でも当時、ジェーン・オースティンのコーナーを設ける書店があった。
 ジェーン・オースティン(1775〜1817)は、イギリスの小説家で、生涯、南イングランドの田園を舞台にした6編の長編小説を残した。サマセット・モームは、オースティンのの小説が好きだったのだろう。彼の「世界の10大小説」に「カラマゾフの兄弟」などと並べて、オースティンの「高慢と偏見」を入れている。「これといった事件が起こるわけではないのに、何故か次のページをめくらずにはいられない……」というモームの言葉は、オースティンの小説の魅力と醍醐味をよく評している。
 しかし、本当に何も起こらなかったのだろうか。「高慢と偏見」では、1組の男女がお互いに影響しあい、それぞれの主義・信条を改めるのだが、ヒロインに比べて男の変わり様は凄まじい、文字通り180度転換、別の人間になった如くである。
 オースティンは、男はこうあるべき、こう変わるべきという主張を南イングランドの田園の描写の中に潜ませた。その複雑さ、したたかさは、とても我々男どもの及ぶところではないのである。