日常診療で役立つ診断キット(第3回)

− インフルエンザ迅速診断キット −

大阪府内科医会 理事 外山 学
 

 インフルエンザ迅速診断キット は、簡便な操作により短時間で判定できるため、抗インフルエンザウイルス薬の出現とあいまって、ここ数年で臨床現場にめざましく普及している。しかし弱点も持つので、特性をよく理解して、正しく使いこなすことが肝要である。

 昨年10月、厚労省の指示により実施された、キットの自主点検の結果が公表された(*1)。この段階で、誤判定の多い4製品が自主的に販売中止となり、現在販売されているキットの性能はほぼ同レベルと思われる。ただ、条件によりばらつきも大きいため、厚労省も「キットのみで判断せず、臨床症状なども含めた総合判断を」と添付文書に明記するよう、全販売会社に通知している。
 現在言われている、キット判定の特徴は、以下のごとくである。
  1. 条件が悪くなければ、感度は概ね80〜90%、特異度は概ね90%以上である。B型はA型に比べてやや劣る。(各キットについて、A・B別、検体種別にまとめた自主点検の結果は*1の結果を参照)。
  2. 陽性となるには、ある程度のウイルス量が必要である。厳密には、陰性とは、検体のウイルス量が検出限度以下の量であることを示しており、インフルエンザでないと断言はできない。
  3. 大人は小児よりも陰性に出やすい。大人はある程度免疫があり、ウイルスの増殖をその分抑えることができるために、ウイルス排出量は小児より少ないからである。
  4. 鼻腔拭い液の方が咽頭拭い液よりも検出率が高い。検体採取手技の技術レベルも重要である。鼻腔ぬぐい液の採取では、鼻腔の最下縁に沿ってできるだけ奥まで綿棒を挿入し、咽頭後壁まで突きあたったところで軽くこすりつけることが推奨されているが、小児などでは理想通りに行うのが困難なことも少なくない。
  5. 発症初日は陰性になりやすい。ウイルス量が少ないためである。
  6. 判定時間が15分のキットでも、ほとんどの場合、陽性はそれより短い時間で判定可能である。陽性例のうちの8割が3分以内、9割は5分以内で判定可能だったとのデータもある。


 ちなみに、日本臨床内科医会が昨シーズンに、会員を中心に実施したスタディ(*2)では、「検体採取部位は鼻腔が多く、陽性例では検査開始15分以内に96.7%の症例で陽性反応が得られた」「ウイルス分離と比較した迅速診断の感度は、発症24時間以内は80%台で、24時間を超えると90%以上になった」との結果が示されている。
 各キットの特徴を表にまとめたものを示す(*3)。番号は、上記スタディで使用頻度が高かった順である。
 前述したように、キットによる検査には限界があり、高い特異度のため、検査結果が陽性であればほぼインフルエンザと診断できるが、陰性の場合の判断には、慎重を要する。そのこともあって、流行のピーク時や、家族や同僚がすでに診断されている場合は臨床症状のみで診断可能であるため、インフルエンザを疑った全症例にキットで検査を行う必要はないが、一方、流行初期には大いに威力を発揮するので積極的に活用を、というのが、一般的な考え方と思われる。

*1)医薬品・医療用具等安全性情報 No.194
*2)インフルエンザ全国調査研究:FLU・STUDY'03-'04/JPA
*3)