日常診療で役立つ診断キット(第二回)

− H-FABPRSウィルス −

大阪府内科医会 理事 西谷 昌也
 

はじめに

  前回に引き続き今回は、診療所や小規模病院で重宝するPOCT(Point of Care Testing)キットの中で、心筋梗塞とRSウイルスの診断につき簡単に紹介する。
急性心筋梗塞
 胸痛や背部痛を主訴とする患者の診察を行うとき、もっとも鑑別したいのは、急性心筋梗塞であろう。理由は早期診断をすればするほど救命率が上がるからである。プライマリケアを担当している、かかりつけ内科には、発症後分単位のオーダーで患者が来院する例が多い。この段階で診断がつけば、急性期再還流療法が十分可能である。この段階では、心電図による診断はしばしば困難であり、外来で長時間経過を見ることが難しい診療所の医師にとっては早期に確実な診断が得られるキットは有用である。
 

H-FABP

脂肪酸結合蛋白(FABP)には心筋型、肝臓型、小腸型があるが、このうち心筋型(heart-typeH-FABP)は主として心筋細胞脂質に局在し、骨格筋や他の組織における含量が少ないことから、心筋傷害の優れた指標になると考えられる。心筋虚血に伴う心筋細胞傷害時に、H-FABPは1〜2時間で血中へ逸脱し、510時間でピークに達することが知られている。血中での上昇時間が約1日と短いため、再還流後の心筋の状態を診断するさいにも有用である。

 

心筋トロポニンT

心筋トロポニンTH-FABPに比べ血中への出現は3〜6時間後、血中での持続時間が14日程度あり、H-FABPが約1日の上昇時間と比べると長いため、数日を経た心筋梗塞の診断が可能である。

心筋梗塞発症後、分のオーダー〜1日以内に診断を下す必要のある診療所内科医にとって、どれかひとつをそろえておくとすればH-FABPであろう。筆者は胸痛を訴える患者の往診依頼で、心電図の実施が困難な環境でH-FABPのみで診断をつけた経験があり、その後、往診カバンにも1セット入れておくように心がけている(冷蔵庫保存が必要なので注意)

 

RSウイルス

RSウイルス感染症は、鼻水で始まり、38〜39度程度の発熱と咳が出現、初発感染の乳幼児では25〜40%に細気管支炎・肺炎を呈するため、時に入院が必要となる。従来、冬季の疾患とされていたが、春から秋の高熱と咳嗽を有する小児の約半数がRSウイルス感染症だったとの報告もあるので、年中かかる疾患だと認識しておく必要がある。本疾患は、母親からの垂直免疫が期待できない上、ワクチンも開発されておらず(最近、PalibizumabRSウイルスモノクローナル抗体)による治療が、早産児や気管支肺異形成症の治療を受けた新生児・乳幼児に対して行われている)、乳児では重症例・死亡例も見受けられるため、乳幼児のカゼ症候群を診察することの多い開業内科医にとっては、経過の予測や保護者への説明、病院への紹介などをする上でこの疾患の診断を早期に下すことは、きわめて重要だと考える。

 

以下に、H-FABP、心筋トロポニンTRSウイルスの主な診断キット表にした。

H-FABP定性(実施料170点、判断料155点、血液採取料12)

メーカー

製品名

測定時間

包装単位

希望価格

大日本製薬

ラピチェックH-FABP

15分

5回

7、750円

心筋トロポニンT定性(実施料110点、判断料155点、血液採取料12)

メーカー

製品名

測定時間

包装単位

希望価格

三和科学

トロップTセウシティブ

15分

5回

4,250円

RSウィルス(実施料150点、判断料144点)

メーカー

製品名

測定時間

包装単位

希望価格

BD

ディレクジェンEZ RSV

20分

10回

12,000円